カテゴリ:作曲法( 11 )
コーヒーと作曲
8月21日に、吉祥寺のスターパインズカフェという、私のホームグラウンドともいえるライヴハウスに出演することが決まっているので、ここのところ、そのライヴのための新曲を書いています。

むかし、月一くらいでライヴをやっていたときは、各ライヴに最低一曲を目標に新曲をつくっていました。それでも、ほかの仕事をやりながらで、けっこうたいへんだったのですが、なんと8月のライヴは、無謀にも、全編新曲でいく予定なのです。

一度も聴いたことのない音楽ばかりを聴かされるのは、お客さまにとって、めったにない体験のはずです。外に音楽を聴きに行くときって、だいたい好きなアーティストだとか好きな曲が目当てで行くわけですから。

でも、あえて新曲に挑戦。

曲のつくりかたは、コーヒーに喩えるとこんな感じです。

布フィルターのなかに、吟味して新たにブレンドした新鮮な豆を適当な細かさに挽いて用意しています。お湯もあります。ここまでが、いわば作曲の準備段階です。いろんなアイディアや想いを集めては厳選します。これがけっこうたいへんです。かなり苦しいです。

作曲はまさに、そのあとの抽出作業です。

まず、いい香りがするまで蒸らします。お湯を本格的に注ぐまで、ちょっとだけ待つのです。作曲をするときも、散歩したり、息抜きをして、おいしい「香り」がするのを待つことがあります。

さあ、いよいよ抽出です。お湯を注ぐタイミングは、コーヒーが香りで教えてくれるのです。ゆっくりと慎重に、でも大胆に、少しずつ円を描くようにお湯を注いでいきます。カップに落ちる最初の一滴が肝心です。このファーストドリップが、曲でいうと冒頭部分。これをおいしく落とせるかで、すべてが決まります。

そして、最後まで手を抜かず、しかも渋味が出る前に抽出を終了しなくてはなりません。

甘い香りが漂ってきます。濃厚なコーヒーが落ちました!

必要があれば、カフェオレにしたり、アレンジしたりすることもできます。

どうでしょうか。おいしそうでしょ。

これまでの私のコーヒー(曲)は、どちらかといえば、ブレンドではなくて、シングルオリジン、つまりストレートコーヒーが多かったのですが、今回は、あえてブレンドさせています。複雑な味を濃縮させたコーヒーづくりに挑戦しています。

ぜひ8月に飲みにいらしてください。
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by eight2one | 2006-05-19 14:54 | 作曲法
物語性(その3~音楽の物語性)
過去二回、作品の物語性について述べてきましたが、では、音楽における物語性とは、なんでしょう。

音楽には時間軸がありますから(時間の芸術といわれますね)、一見、物語性をつくりだすのは簡単に思えます。ところが、そうでもないのです。

たとえば歌詞を用いて物語を歌にしようとします。すると、多くの場合、たいくつな、状況説明的な音楽になってしまいます。多くの作曲家が、たとえば歴史の流れなどを一曲の音楽で表現してみたりしていますが、多くは非常にたいくつです。おそらく、表現ではなく説明になってしまうからでしょう。

我々が感動する音楽には、ある瞬間の心情や風景の状態を描写した類のものが多いのではないでしょうか。

物語性のある歌曲・オペラやミュージカルでは、挿入される歌には必ずしも時間軸に沿った物語性のある歌詞が使われているわけではありません。むしろ、ある特定の(恋なら恋の)心情を朗々と歌い上げるようなアリアが主でしょう。しかも、音楽そのものは、物語のように展開される構造を持っているでしょう。

一瞬の感動やときめき、深い感情や想念を、時間軸に沿って展開し、物語にする。そんな役割が、音楽には期待されているように私は思うのです。
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by eight2one | 2006-03-24 12:36 | 作曲法
物語性(その2~絶妙な意外性)
さて、前回、『「ズレ」と「解決」に、物語性の核がある』と述べました。それについて、少し詳しく書いてみます。

今回は、前回書いた飛行機にまつわる短い物語を、もう少しだけ長くすることで、より楽しめる物語にしてみましょう。

では、「ズレ」る箇所、つまり『乗っていた飛行機の機体が突如大きく揺れ始め、その後左右に大きく揺れながら急激に高度が落ちていった。乗客は叫び、慌てふためいた』という箇所は、どうおもしろくできるでしょう。

たとえば、ズレる前、つまり飛行機に乗る前に、事故の予感がしたというのはどうでしょう。朝方、枕元に死んだおじいさんが現れて「今日は飛行機に乗るな」とか言ったという設定(村上春樹さんの「アンダーグラウンド」に出てきますね)は私的には好きですが、非現実的と思う人も多いでしょう。もっと現実的な、たとえば、普段は混むことのない空港までの道のりがその晩に限り混んでいて、遅刻のため一度は係にチェックインを断られた、とかいう設定もありです。

では次に、そのズレが「解決」される箇所、つまり、乗客が救われる箇所を、もう少し工夫してみましょう。

絶体絶命な状況に直面し乗客全員が歌をうたい始めたとか、機体に精通している乗客の一人がコックピットに入り込み意識不明の機長を救ったとか、UFOが現れて飛行機を誘導してくれたとか(笑)、いろんな可能性があります。あなたならどう設定しますか?

まぁ、ここで私が思いつくものは、さりとて面白いものでもないのですが、アイディアさえあれば、シンプルな飛行機墜落ドラマが、急に面白い物語になる可能性があることは分かっていただけたと思います。

予定調和的な物語の場合は、「印籠」が出てきてみんながひれ伏して「解決」となるのですが、それだけでは、つまらないと感じる人も多いかもしれません。受け手の予想に反する「意外かつ絶妙な解決」が、ほしいのです。でも、ただ奇抜なだけでは人はついてこられないかもしれません。絶妙でなくてはならないのです。この「絶妙な意外性」という点に、作家としての個性と力量が問われるのではないでしょうか。

古今東西のいろんな「名作」を思い出してみてください(この場合は小説や映画、漫画などでしょうか)。絶妙な「ズレ」と「解決」が、そこにはあるように、私は思うのです。

(つづく)
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by eight2one | 2006-03-09 12:11 | 作曲法
物語性(その1)
ここのところ、創作において大切にしようとしていることの一つに、「物語性」というのがあります。つまり、作品に「物語があるか」ということです。でもそれは、「ドラマがあるか」ということとはちょっと違います。

私は、創作の便宜上、ドラマは物語の中に含まれるけれど、ドラマだけでは物語にはならない、というふうに区別しているのです。これはあくまで私の中での定義ですから、異論もあるとは思います。その定義は以下のようになります。

ドラマは日常(通常=norm)からの逸脱、ズレの描写。

一方、物語は、normからドラマを経て、新たなnormへと還っていくストーリー。こんなふうに思っています。

たとえば、こういうことです。

「乗っていた飛行機の機体が突如大きく揺れ始め、その後左右に大きく揺れながら急激に高度が落ちていった。乗客は叫び、慌てふためいた」というのがドラマ。Normからのズレ。非日常的な状況。

「家族の待つ東京に帰ろうと、いつものように金曜日の最終の飛行機に乗った。すると、乗っていた飛行機の機体が突如大きく揺れ始め、その後左右に大きく揺れながら急激に高度が落ちていった。乗客は叫び、慌てふためいたが、乗務員の冷静な誘導により、各自が何をしなければいけないかを自覚した。短い時間に私は、これまでの人生を振り返り、家族の幸せを願った。もう誰もが死を覚悟したとき、飛行機は太平洋上に着水し、乗客全員が無事であった」というのが、物語。通常から「ズレ」て、ドラマを経て、そして「解決」される。

この即席でっちあげ「物語」は、たまたまハッピーエンドですが、もちろん、必ずしもそうである必要はありません。

そして私は、物語性の核が、この「ズレ」と「解決」にある、と考えているのです。

(つづく)

(注:一部の方はご存知の、もう一つのブログと同じ記事ですが、途中から違う話にしいこうと思っています)
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by eight2one | 2006-03-02 13:41 | 作曲法
直接話法と間接話法
一般的に、女性に比べると男性のほうが、会話のなかに間接話法を多く用いると言われます。

それはつまり、女性なら「Aさんに会ったらね『ちょっと~なんだか元気そうじゃない?!』っていわれちゃった」と本人の口まね入りで場面説明をするのに対し、男性は「Aさんに会ったら元気そうだと言われた」と、Aさんの言葉を自分の言葉に言い換える傾向があるということです。前者が直接話法、後者が間接話法と呼ばれます。

なんでこんな話をしているかといいますと、河合隼雄さんの本に「日本には父性原理が少ない」と書かれているのを読んで、そういえば音楽もそうかもと思ったからです。

西洋音楽は、まさに父性原理で貫かれています。ベートーベンの交響曲に代表される、揺るぎない構造と音のコントロール。

表題音楽の「田園」ならば、田園に「ついて」の音楽であると、私には思えます。どこか間接的です。

それに対し、私が好きで、しかも世界的に評価されている、武満徹、佐藤聰明といった日本の作曲家の音は、たとえば夜なら、夜「そのもの」を表しているように思えます。まるで夜じしんが自分の言葉で直接語っているかのような音。音が独り歩きしてどこかに行ってしまいそうです。それは間接的な「夜について」の音楽ではありません。

どちらの音楽も好きですが、私は音をつくる側のものとして、直接話法的な作曲により関心があります。
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by eight2one | 2006-02-15 11:01 | 作曲法
分析と構築
ここしばらく、創作へエネルギーは向けているのだけれど具体的な進展がなく、なんとなく先の見えない状況が続いていました。そんなとき、草間彌生さんのインタビューを目にしました。

草間さんはある時期、ニューヨークでフロイト派の精神分析を受けていたそうですが、それにたいし、こんなことをコメントしていました。

「ニューヨークでフロイト派の精神医についたために、絵を描くのがだめになったの。なぜかっていったら、フロイト派というのは何もかも全部、分析しちゃうでしょ。分析じゃなくて構築するのが私の仕事なのね。」(BOOKS CLUB KAI NEWSLETTER Vol.049より

これを読んで、ここのところ、なぜ創作するのかとか、なぜこのテーマなのかとか、目的を言葉にしてみようとか、とにかく言葉による分析ばかりをしていた自分に気づいたのです。他人のせいにするわけではないのですが、「作品を言語化できなければだめ」と力説されていたある方の影響もあって、言語化の向こうに確信が見つかるのではないかと思い、とにかくどんどん自己分析していって、袋小路に陥っていたわけです。

やれやれ。直観と構築を忘れておりました。言語化なんて後からでいいんだから。順番が逆でした。まぁ、でもおかげで、多少は動機の言語化ができるようになりました。プレゼンの時には役立つでしょう。
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by eight2one | 2006-01-21 22:16 | 作曲法
吉松隆さん
作曲家の吉松隆さんをご存知でしょうか。数少ない私の好きな「交響曲書き」さんです。曲のつくり方を変えようと模索していたときだったので、絶妙なタイミングで昨晩、読み応えのある彼のサイトを見つけ、しばし読み込んでしまいました。

難解な現代音楽が全盛期(といっても好きな人はごく少数)だったころから、吉松さんの音楽には、自然と惹かれるものがありました。大迫力のアレグロの楽章と、リリカルなアダージョが混在する彼の書法は、まさに私好み。そこで吉松さんについて調べてみると、そのプロフィールを読んで納得。彼は作曲を独学、しかもプログレシヴロックなどポピュラー音楽大好き人間だったのです。私も特に80年代はロックばかり聴いていましたから。

私は、どちらかといえば「どクラシック」が苦手。それは、モーツァルトとユーミンとどっちが好きかと訊かれても即答できないほどです。

それでも、吉松さん同様、交響曲がひとつの「最高峰」だと思っているので、自分の語法で、自分にとっての最高峰となる曲を書こうと、昨晩、ふんどし(はいてないけど)を締めなおしたのでした。

以下は吉松さんの言葉です。

『色々と異論反論もおありでしょうが(笑)、少なくとも「最高峰」を目指さないものは交響曲とは言えない。それが実際には、空回りであっても、単なる誇大妄想にすぎなくても、あるいは誰にも認められない孤峰でも。とにかく、作曲家が自分の持てる能力を最大限に発揮して、純粋に楽器だけで「最高の高み」を目指すこと。そして、「感情」と「思想」と「性格」と「存在」と「技術」のすべてを音楽に投入すること。

それに、Sym(共に)Phony(響く)と書いて〈交響曲〉ですから、人間とか自然とか、人生とか宇宙とか、愛とか失恋とか、希望とか絶望とか、とにかく人間に関るすべてのものを、文字や思考や映像ではなく「響き」に収斂させたもの。それが交響曲(シンフォニー)です。』
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by eight2one | 2005-12-09 10:47 | 作曲法
価値のないもの
安友志乃さんの「あなた写真を拝見します」という本を読んでいたら、最近考えていたことがそのまま言葉になっていた。敬意を表しつつ引用させていただく。

「なにかを表現することはすばらしいことである。けれども、そこに真剣に向かってゆくと、表現というものは、自分の業を自分自身に突きつけて来るようなところがある。自分を突き詰めていって、そこに見えるものがなにも楽しいものであるとは限らない。むしろ、その逆に自分自身にはどうすることもできない道理としての因果、避けようのない業、を見るのである。その業に開き直って向き合い、乗り越えていくことの先に未来はある。にもかかわらず、多くの人はそこで躊躇し、すごすごと逃げ帰るのである。躊躇の原因は、世間体であり、社会規範というものがこびりついた心である。(中略)

多くの人と会い作品を見ていて、人がなぜこんなにも本来の自分、正直な自分、ありのままの自分というものを表すことが困難なのかと、私はいつも思う。作品というところへ来てまでも、どうして、ああ見られたい、こう見られたい、というようなところをやるのかわからない。周囲の眼を気にし、くすぶり続け、作り上げられたものになど、なんの価値もないのである。」
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by eight2one | 2005-04-19 15:12 | 作曲法
瞑想
先日、妻に「そういえば最近、瞑想してないね」と言われた。たしかにそうだ。以前は毎日のようにやっていたのに。

瞑想とかいっても、たいしたことをやっていたわけではないのだが、それでも呼吸がゆっくりと整い、深まり、落ち着くなど、いいことはたくさんあったと思う。

以前習っていたヨガの先生に、私がいると「場のバイブレーションが安らぐ」と言われたことがある。それはたぶん、私のゆっくりな呼吸と無縁ではないと思う。

でも最近は花粉症と瞑想をしていないせいで、呼吸は浅くなりがち。

今日仕事の合間に瞑想をした。短時間だったがすごく気分がよくなった。毎日続けよう。
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by eight2one | 2005-04-18 21:33 | 未分類
ブレる心
作曲に限らず、自分の作品にたいしては、心に「ブレ」がない、確信を持った状態でいつもいたいと思う。

でも、ものをつくる仕事をしていると、周りの人が平気でずけずけとコメントしてくれて、ブレることがある。

肯定的なフィードバックばかりならいいのだが、ネガティヴなコメントももちろんある。コメントしてくれるその人にとってはそれが「真実」であるから、その人はそれをまるで「絶対的な真実」のように思っているのがよく分かる。だから自信をもってコメントされる。

私はなぜかその場ではニコニコと平気な顔をしてそのコメントを聞いてしまうのだが、あとになって、それがじわじわと心の中で広がって、傷付くことがある。

それでもいつも、「それはあくまでその人にとっての真実なんだから」と言い聞かせて、心をもとのポジションに戻そうとするが、けっこうひっぱるときもある。

やれやれ。ブレない心がほしいもんだ。まぁ、でも、そんなブレる心をそのまま作品に反映させるのも、わるくないかも。
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by eight2one | 2005-04-17 23:46 | 作曲法



作曲家・安達の日記。写真は愛猫エミリオ。
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