安友志乃さんの「あなた写真を拝見します」という本を読んでいたら、最近考えていたことがそのまま言葉になっていた。敬意を表しつつ引用させていただく。
「なにかを表現することはすばらしいことである。けれども、そこに真剣に向かってゆくと、表現というものは、自分の業を自分自身に突きつけて来るようなところがある。自分を突き詰めていって、そこに見えるものがなにも楽しいものであるとは限らない。むしろ、その逆に自分自身にはどうすることもできない道理としての因果、避けようのない業、を見るのである。その業に開き直って向き合い、乗り越えていくことの先に未来はある。にもかかわらず、多くの人はそこで躊躇し、すごすごと逃げ帰るのである。躊躇の原因は、世間体であり、社会規範というものがこびりついた心である。(中略)
多くの人と会い作品を見ていて、人がなぜこんなにも本来の自分、正直な自分、ありのままの自分というものを表すことが困難なのかと、私はいつも思う。作品というところへ来てまでも、どうして、ああ見られたい、こう見られたい、というようなところをやるのかわからない。周囲の眼を気にし、くすぶり続け、作り上げられたものになど、なんの価値もないのである。」